獣医療の進歩や飼い主さんの意識の高まりから、ペットの世界でも高齢化が進んできました。
日々の診察の中で、15歳を超える犬や20歳以上の猫を診る機会もそう珍しいことではありません。
そんな長生きペットと暮らしていく上で、人間同様に介護の問題も避けられないものになりました。
高齢ペットならではの問題は数多く存在しますが、今回はペットの認知症についてです。
認知症(以前は痴呆という言葉で表されていましたが、現在は認知症という呼び名に統一されました。)は犬では12歳頃から発症が見られ、15歳では約30%、16歳を超えると約60%が発症すると報告されています。
猫は犬と比べると発症率がかなり低くなりますが、やはり15歳を超えると発症の可能性は上がってきます。
・今までトイレの失敗なんかしなかったのに、突然部屋の真ん中で粗相してしまった。
・ずっと部屋の中をうろうろして落ち着かない。
・ちょっと目を離していた間に、家具の隙間に入り込んで出られなくなっていた。
・夜中に突然吠えはじめた。
・大好きだった家族に、突然そっけない態度。
こんな症状が見られた場合、あなたのペットは認知症なのかも知れません。
あるいは、認知症以外の理由があるのかも知れません。
なぜこのような曖昧な表現になってしまうかというと、動物の認知症を客観的に診断するための検査は今のところ存在しないからです
。泌尿器のトラブルを抱えていればトイレの失敗は起こり得ますし、どこかに痛みや違和感を感じていれば、そわそわ落ち着かなくなることもあるでしょう。
こうした体の異常がないことが確認されて初めて、認知症と診断されます。
逆に言うと、これは認知症だから仕方ないよね・・・と飼い主さんが思い込んでいた症状が、実はちゃんと治療すれば治せる病気の可能性もあるということです。
認知症と診断された場合は、完治させる薬というものは存在しませんが、進行を遅らせるための治療はあります。
高齢であることを理由に、全てのことを「諦める」ではなく、長生きしてくれたペットの変化を「受け入れる」。
そのためにも、まずは現状を正しく把握することが大切です。
相談だけでもお気軽にご来院下さい!